アドバンスコースでは、学習旅行やインクルーシブイベントに対応可能な地域のユニバーサルフィールド化を目指し、団体・グループ旅行、特に学習旅行を誘客・実施できるようになるための知識や、ツアー企画力、地域調整力を身につけます。
また、ユニバーサルフィールドを活用したユニバーサルツーリズム事業の自走化に向け、講座での課題を地域全体で取り組んでいただくことで、地域関係者のユニバーサルツーリズムに関する理解の促進と、地域内の連携体制を構築していきます。
以下に、アドバンスコース講座の内容をご紹介します。
講義
ユニバーサルフィールドを活用したインクルーシブ教育旅行の受け入れについて
〜法令制度・取り組み事例から〜
学校現場では、障害のある子どもも障害のない子どもも、可能な限り同じ場で共に学ぶことが求められており(インクルーシブ教育)、障害の有無に関わらず、等しく学ぶことが保証されるために、個々の障害の状態や、必要な支援に応じた配慮や環境の調整を行うこと(合理的配慮の提供)が法的義務とされています(下図参照)。このようなインクルーシブ教育の実施場所や、合理的配慮の提供は、教室の中や学校内に限ったことではなく、自然体験活動や修学旅行など、屋外での学習活動場面にも適応され、本講座の受講生の勤務地も関連する学習の場となっています。
そのため、学習旅行受入のためには、観光関連事情だけでなく、教育関連事業についても知っておく必要があります。今年度講座では、アンケート結果や事例、法令等の紹介を踏まえた以下のような講義を行いました。
学校は学習旅行先をどのように決定するのか
-
学校の旅行先施設等に対するニーズ
-
インクルーシブ教育制度及び学校内での障害のある子どものニーズ
-
教育関関連法律・条約について
(教育基本法、学校教育法、障害者の権利に関する条約、障害者差別解消法など)
障害のある子どもたちの通う学校では、旅行先の決定や、旅行先の施設スタッフ等に対して、以下のようなニーズを示しています。
-
宿泊先の障がい者対応や、観光先等の障がい者対応の質を重視
物理的な環境整備の充実へのニーズに加え、
-
障害そのものや、旅行者に対する理解と対応についてのスタッフ教育の実施
-
選択可能な豊富な教育プログラムの用意
-
プログラムや対応について一緒に考えてくれるゆとりや相談しやすい雰囲気
特別支援学校等の修学旅行など宿泊行事に関するアンケート調査、国際障害者交流センター調査(2017)より
受講生所属地の事業形態は民間事業者が多く、合理的配慮の提供については「努力義務」となっています。しかし一方で、学習旅行を実施しようとする学校は、子どもたちが学習するために必要な合理的配慮を提供することが、「法的義務」となっています。
そのため、先ほどのアンケートにあるような『ニーズに対応可能かどうか』が『旅行や学習先として選択してもらえるかどうか』に影響し、結果として、収益にも影響してきます。
このような現状からも、受講生だけでなく、地域全体のテーマとして積極的に取り組んでいくことが、必須となってきます。UFC養成講座のアドバンスコースが、地域関係者を巻き込んだ講座を行う理由のひとつです。
講義・実践
受講生地域のユニバーサルフィールド化・地域の自立化に向けて
上記の背景を踏まえ、アドバンスコースでは、受講生とその所属地域の観光事業関係者に様々な課題に取り組んでいただきながら、受講生地域のユニバーサルフィールド化を目指します。
【ユニバーサルフィールド地域実践①②】
地域の旅行事業関係者のユニバーサルツーリズムに対する理解を促し、連携体制を整備するために、各受講生地域において、ユニバーサルフィールドの説明や、取り組むことによる効果の説明、専用機材の取り扱いとその活用方法、安全講習などを行いました。
説明会の開催については、アドバンスコース受講生が地域の中核人材となって、地域の主要メンバーの招集、日程調整、会場設定などをしていただき、ユニバーサルフィールド・コンシェルジュに必要なコーディネート力を身につけていただきます。また、地域関係者と受講生が一緒に受講していただくことで、自地域の課題の発見や、今後の展開方法について地域全体で検討していただくこともねらっています。
地域実践①の様子(8月上旬から10月上旬)
地域実践②の様子(1月上旬から2月上旬)
【ユニバーサルロゲイニングのポイント設定】
ユニバーサルフィールド地域実践①の終了時に、各地域での講座参加者に対して、ユニバーサルフィールドの概念を取り入れた自然散策型ポイントラリー(ユニバーサルロゲイニング)のポイントを地域内に5つ程度設定(想定も含む)してもらうように依頼し、その調整をアドバンスコース受講生の課題としました。
ユニバーサルロゲイニングとは
バリアフリー環境の整備が困難な自然を観光資源とする地域において、ユニバーサルフィールド推進観光PRアプリ(UNI.ROGA)を活用し、障害のある方が自然を楽しめる環境を構築するため、産学が連携して実施するインクルーシブ観光プログラムです。
ユニバーサルフィールド化された参画地域をフィールドにして、障害がある方々を積極的に受け入れようとするお店や施設はもちろん、自然の中にあるポイントを、地図をみながら探します。『人』にもロゲイニングキャラクター(ロゲキャラ)としてポイントが設定され、ロゲキャラから出題される課題がクリアできれば、ポイントを獲得できます。
そして、獲得したポイントの合計点で順位が決まり、上位入賞者には参画地域の特産品など豪華商品が当たります。多様な人々がユニロゲを通して積極的にコミュニケーションを楽しみながら共生社会を実現するプログラムです。
地域の中にすでにある魅力的なスポットやアクティビティを、ユニバーサルフィールドの考え方と、専用機材、人の手による必要最小限のサポートを活用することで、車椅子利用者とその家族や友人などの旅行者もその魅力を体感できるようになります。加えて、飲食店の利用や、地域の名物人との写真撮影など、旅行先で出会う地域の人とのコミュニケーションを促進するようなポイントの設定があることで、これまで限定的にならざるを得なかった、車椅子利用者とその家族や友人の旅行先や旅行先での過ごし方の選択肢を広げることができ、リピーターの獲得や、受講生各地をユニバーサルツーリズムでつなぐことも可能となります。
また、このロゲイニングポイントの設定を検討することで、受講生や地域の観光事業者においては、設定に向けて互いに顔を合わせ、コミュニケーションをとることや、ユニバーサルツーリズム受け入れのための地域体制の現状把握と課題解決の方向性について意識をする機会となります。地域人材の育成やユニバーサルツーリズム受け入れに必要な環境整備を通して、地域のユニバーサルフィールド化を目指します。
ユニバーサルロゲイニング 企画・監修: 合同会社SOU
ユニバーサルフィールド推進観光PRアプリ 開発:信州大学工学部 小林一樹 准教授
信州大学プロジェクト 信州リビング・ラボ
各地域からは、アドバンスコース受講生が調整役となり、地域関係者やベーシックコース受講生と連携し以下のようなコースが報告されました。今後、単発常設イベントにかかわらず、実現に向けて検討されることを期待します。
【後輩コンシェルジュへの指導助言】
アドバンスコースでは、受講生が特に身につける力として、「企画力」「調整力」「コミュニケーション力」「評価・改善力」を挙げています。地域の観光事業関係者との調整だけでなく、地域の若手や、同じくユニバーサルフィールド・コンシェルジュを目指す後輩受講生への指導助言者としての役割も担っていただきます。
今年度の講座では、
-
ベーシックコース2回目講座(2019.9.3〜9.4) 講義『ユニバーサルフィールド・戸隠モデル』
-
ベーシック・アドバンスコース合同講座(2019.11.7)『ユニバーサルロゲイニングプラン合同発表会』
-
ベーシック・アドバンスコース合同講座(2020.2.5)『ユニバーサルツーリズムの可能性と今後の展開』
-
アドバンスコース 『ユニバーサルフィールド地域実践①②』
において、アドバンスコース受講生として、地域の事例紹介や、地域調整の際の難しさと解消法の紹介、ベーシックコース受講生の企画ツアーに対する足りない視点の指摘と対策案の提案などを行っていただきました。
アドバンスコース受講生自身の経験を生かしながら、コンシェルジュとしての現在の力量を確認することができるとともに、ユニバーサルツーリズム推進のための仲間を育成することにつながります。
〜今後について〜
UFC養成講座を修了し、ユニバーサルフィールドを活用したユニバーサルツーリズムを推進、事業化していくためには、地域内外の様々なネットワークや連携した支援体制が必要となってきます。
今後は、産学連携により、コンシェルジュ運営委員会を含むユニバーサルフィールド推進協議会(案)を設置し、修了生地域における継続的なユニバーサルフィールドツアー造成・催行支援や、インクルーシブ学習旅行プログラムの開発と実施に向け、人材育成及び派遣、教育研究体制の構築と研究成果の現場への還元を行っていきたいと考えています。
アドバンスコース修了生のうち、2名の方にはコンシェルジュ運営委員会の代表及び副代表として、各地域のコンシェルジュからの意見集約や、ユニバーサルツーリズム推進に関する事業及び教育研究を行う際の調整役として、ユニバーサルフィールド推進協議会(案)に参画いただきたいと考えています。
お問い合わせ