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令和元年年度「産学連携による観光産業の中核人材育成・強化事業」

UNIVERSAL FIELD CONCIERGE 養成講座

ユニバーサルフィールド・コンシェルジュ

UNIVERSAL FIELD 

CONCIERGE

ユニバーサルフィールド・コンシェルジュ

第1回ベーシック養成講座

ユニバーサルフィールドツアー商品化に向けた

ユニバーサルフィールドコンシェルジュ

が持つべき基礎知識

UFCのチカラ:①企画力 ②専門知識

令和元年度講座実施日:2019年8月1日

海外の障がいのある人とその家族や友人が日常的に行なっているアウトドアツーリズムを知るとともに、バリアフリーを基準としない、日本でこれまでになかった視点を持つUFCが持つべき6つのチカラとその社会的役割について理解することをねらいます。

講義1

ユニバーサルフィールド・コンシェルジュ養成講座について

加藤彩乃

信州大学

 

 ユニバーサルツーリズムは、障がいのある人だけでなく、その家族や友人、また障がいのある人に限らず、すべての人が利用可能となる環境整備の上に成り立っています。
 UFC養成講座では、この環境整備の方法について、「人の手」「専用の機材」「アイディア」の3つを活用し、山岳観光地域を合理的に利用可能とする『ユニバーサルフィールド』と言う新しい概念を採用し、特に、これまで物理的に自然の中に出かけることが難しいとされていた重度の車椅子利用者とその家族や友人の山岳観光地での旅行に焦点を当てて講座を進めます。

特別講義

〜大自然はバリアフル!だから楽しい〜

中岡 亜希氏

一般社団法人ata Alliance 代表理事

 

 「行ける場所」ではなく、「行きたい場所へ」へ。

 これは、ご自身も重度な障害のある車椅子利用者である中岡氏が講座の中で述べられた言葉です。中岡氏は現在、障がいのある人とその家族や友人たちが同じ時間、同じ景色を一緒に楽しむスポーツやアクティビティについて、利用者の状態や目的にアダプトさせ提供することを目的とする会社を設立し活動をされています。

中岡氏自ら海外に出向き、障害のある人が実施するアウトドアアクティビティや専用機材運用方法について実地調査されたご経験を踏まえ、現在の日本における障害のある人とその家族の自然の中での旅行について、その選択肢がほとんどなく、当事者家族は、バリアフリー環境が整っているかどうかで、旅行先を決定することがほとんどであると問題提起されました。

最後に受講生に向けて、UFC養成講座を通して、すべての旅行者を「行きたい場所」へ誘うことができる社会づくりの一端を担う人材になって欲しいと、エールが送られました。

講義2

車椅子ユーザーが自然を楽しむ限界とは

 

 

ユニバーサルフィールド・コンシェルジュとは、以下のような役割を担う人材です。

 

  • 障害の有無や年齢を問わず、バリアフリー環境の整備が困難な自然環境を活用し、車いすユーザーとその家族や友人が共に楽しめる環境を整備する。

  • 専門的な知識を持って、ユニバーサルフィールドツアーに関わる旅行商品の企画や、観光事業者へのアドバイスを行う。

  • 観光事業者と旅行者のコーディネートに対応できる。

 

 これらの実践ができるようになるために、UFC養成講座では、ユニバーサルフィールド・コンシェルジュが持つべき資質について次の6つを設定し、座学と実践を行います。

企画力・専門知識・調整力・発信力・コミュニケーション力・評価改善力

―ユニバーサルフィールド・コンシェルジュが持つべき6つのチカラー

 

①企画力

  • 対象者(利用者)のニーズを把握している

  • 対象者(利用者)のフィールド活用シーンを想像することができる

  • ツアー造成に必要な知識を持ち、その動向や情報を収集している

 

 ユニバーサルフィールドツアーの利用者のニーズには、旅行に関するニーズと、配慮に関するニーズの2つがあります。

  1. 旅行に関するニーズ・・・個人旅行では、体験できる内容について / 学習旅行では、教育的効果や安全対策について

  2. 配慮に関するニーズ・・・人的サポートの有無、食事、設備、移動方法などについて

 

 ユニバーサルフィールド・コンシェルジュはこれらのニーズを様々な方法を用いて十分に把握し、ツアーやイベントの企画、アクティビティの開発を行うことが求められます。

 しかし一方で、これまで障害のある人とその家族や友人の自然の中での旅に関して、選択肢があまり多く提示されていなかったために、「行きたい場所」ではなく「行ける場所」を選択してしまうことが障害のある人とその家族の旅行ニーズとされてしまっていた現状にも気づく必要があります。

 

 そのため、ユニバーサルフィールド・コンシェルジュは、旅行行法など旅行に関する専門知識はもちろんのこと、アクティビティ内容や、専用機材などについても最新の情報を常に集め、知識や情報を更新していくことが必要です。また、情報収集の範囲は日本の先進事例に留まらず、海外での事例まで、広い視野を持っておく必要があります。

 コンシェルジュが高度な専門知識や、最先端の情報を持ち企画を行うことで、障害のある人とその家族や友人の限界が取り払われ、可能性は無限に広がります。

②専門知識

  • 「バリアフリー」と「ユニバーサルフィールド」の違いを正しく説明することができる

  • 山岳観光資源を活用するために必要な専門機材を知っている

  • 必要な安全対策について正しく理解し、説明することができる

 

 障害のある人とその家族の限界を取り払う魅力的なツアーの企画を行うためには、まず、バリアフリー環境の整備が困難な山岳観光資源をどのように合理的に活用するのかについて、整理し知識や技術を身につける必要があります。

 そのポイントは、『ユニバーサルフィールド』という、これまでにない概念の導入です。

 

―ユニバーサルフィールドとはー

物理的障害、設備の有無を意味するものではなく、身体的、心因的状態が異なる多様な人々が、『着想』や『人の手』を持ち寄り、機材などを用いることにより誰もが実用可能となる『合理的環境』のことを示します。

バリアフリーとユニバーサルフィールドは以下のような違いがあり、ユニバーサルフールドの考えは、自然体験型観光を楽しむための新たな選択肢となります。

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③調整力

  • ツアーを造成するために必要な、連携すべき要素を理解している

  • 社内、社外に対して合理的配慮の要素について説明ができる

  • 社内、社外に対して利用者受け入れに対する適切な助言ができる

 

 ユニバーサルフィールドツアーの利用者のニーズには、旅行に関するニーズ、配慮に関するニーズとして、大きく分けて、

  1. 何をするのか(目的)

  2. どこにいくのか(フィールド)

  3. どこに何泊するのか(滞在場所・期間)

  4. どのようにいくのか(交通手段)

  5. どのように過ごすのか(支援体制)

の5つの要素があります。

 

 ユニバーサルフィールド・コンシェルジュは、旅行企画・実施のためのコーディネーターの役割を担うため、これらのニーズに応えるべく必要な連携体制を地域で整える必要があります。旅館・ホテルや、アクティビティ事業者だけでなく、公共交通機関や、福祉機器レンタル事業者、地元旅行介助事業者との連携もその一つです。

 連携体制の構築に向けては、コンシェルジュ自身がユニバーサルフィールドの概念について十分に理解し、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供の必要性を説明しつつ、旅行者の受け入れに向けた対応策について指導助言を行うなどの役割があります。

 専門知識と、コミュニケーション力を持って関係者を調整していく高度な力が必要となります。

④発信力

  • 造成したツアーやアクティビティに関する情報を魅力的に伝える手法を知っている

  • 造成したツアーやアクティビティに関する情報を伝える適所を理解している

  • 対象者(利用者)が必要といている情報を理解している

 

 その情報を必要とする人に、必要な情報が届いて初めて情報発信は成功します。そのためには、その情報が必要としている人のニーズに合っていること、その情報が魅力的であること、情報を欲しいと思う人に届く媒体を利用して発信することが必要です。

 その中で写真は、地域の自然環境や、そこにいる人、ツアーの魅力を一瞬で伝えることができる方法の一つです。
 写真には、撮影者の想いや感性がそのまま写り込みます。どのようなメッセージを伝えたいのか。ユニバーサルフィールド・コンシェルジュがそのメッセージを強く日頃から意識をすることで、これまで自然の中で旅をすることを諦めていた障害のある人とその家族や友人に伝わっていきます。

―バリアフリーインフォメーションではなく、バリアインフォメーションー

 

 障害の状態によって、また季節や活動内容、家族構成、活動ニーズなどによって、各旅行者が必要とする情報は異なるため、そのすべてを公開するには限界が生じます。
 そこで本講座では、自然の中でのAというツアーを楽しむために、「どこに、どのようなバリアがあるのか」そして、「それを解消するためにどのような道具やサービスが用意されているのか」という情報を開示することで、各旅行者の状態に応じて、旅行者に選んでもらえるような情報発信を目指します。

⑤コミュニケーション力

  • コミュニケーションをとるべき相手を理解している

  • 円滑なコミュニケーションをとることができる

  • 適切なコミュニケーションをとることができる

 

 コミュニケーション能力が高い人。とは、具体的にはどのようなことができる人のことでしょうか。コミュニケーションは「言語」だけのやりとりとは限りません。「表情」「発声」「仕草」など大小多様な情報を読み取り、相手が何を言おうとしているのか、どのような気持ちでいるのか、を受け取り、こちらが反応したり、必要な行動を起したりすることがコミュニケーションの本質です。

 

 また、「障害者」とコミュニケーションをとるのではなく、「一人の人、一人の旅行者」と対話し、旅行の際に障害による困難さがあるのであれば、『介助の概念』に基づき、対応します。


※介助の概念※
介助とは、身体的、心因的状態の異なる人々が共に生きるために、必要な時、必要とされることを行う「必要最小限の行動」
 

 ユニバーサルフィールド・コンシェルジュは、多様な旅行者のニーズを把握し、魅力的な山岳観光地でのツアーの実施に向けて、「コミュニケーションをとる」という真の意味を理解し、実践を通してその力を身につけていく必要があります。

⑥評価・改善力

評価・改善力には、

  • 魅力的なツアー造成に必要な要素が企画に含まれているか

  • 合理的な配慮と適切な表示がされているか

という項目が含まれています。

 魅力的なツアー造成に必要な要素には、「タイトル(商品名)」「写真や動画」「ツアー内容とその表現」が含まれています。本講座が対象とするユニバーサルフィールドを活用したユニバーサルツーリズムの利用者は、車椅子利用者を含む障害のある人だけではなく、その家族や友人なども旅行者として同じ時間、体験を大自然の中で過ごしていただくことを目指しています。そのため、障害がある人を意識しすぎたタイトルや、対象者の偏りを感じさせるような写真や動画の使用ではなく、UFCがコーディネートするツアーは、大自然の中にあるバリアをも家族や友人と一緒に楽しんでもらえるような内容と表現にする工夫が必要です。

 

 合理的な配慮と適切な表示とは、「ツアー行程(時間)」「バリアアクティビティ」「バリアインフォメーション」のことを示します。障害のある人とその家族や友人が自然の中で旅行をする際には、一般的な企画よりもプログラムや行程に時間的な余裕を持ってツアー造成する必要があります。

 また、活動をする際には、大自然には多くのバリアが存在し、施設(屋外)内の移動にもバリアが点在しています。その物理的バリアを楽しんで解消してもらうために、アウトドア用車椅子の活用など、『バリアアクティビティ』としてその解消方法などについて説明をする必要があります。一方、旅先での生活に直結するトイレやお風呂、階段などの対応については、『バリアインフォメーション』として、バリアフリー設備の設置状況について説明し、階段や段差などバリアフリー環境が整っていない場合はそれをどのように解消するのかを説明する必要があります。

お問い合わせ

信州大学ユニバーサルツーリズム推進人材育成事業 事務局

TEL:0263-37-2193

MAIL : ufshinshu@shinshu-u.ac.jp

- 企画・監修 -

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令和元年度「産学連携による観光産業の中核人材育成・強化事業」 山岳観光資源を活かしたユニバーサルツーリズム推進人材育成事業

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